クジラ アタマ の 王様。 伊坂幸太郎さん「クジラアタマの王様」あっという間に読み終える

伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』感想/未来を切り拓くのは誰だ!?

クジラ アタマ の 王様

ここからネタバレ注意! クジラアタマの王様の感想(ネタバレ) 伊坂幸太郎が叶えた長年の夢 というわけで、今回の『クジラアタマの王様』は長年の夢がようやく叶ったものです。 とあとがきで伊坂さんは書いています。 長年の夢とは 「小説の中に、作品の一部としてコミックパートが含まれる構造」を実現させることです。 『クジラアタマの王様』では間間に川口澄子さんのコミックパートが挿入されています。 始め私は挿絵を見るような気持ちで読んでいました。 でも読み進めるに従って、このコミックパートを「読む」ことで浮かんでくる世界の感触のようなものがあることに気づきました。 表現方法として小説の長所、映画やコミックの長所というものはあると思います。 奇をてらうとか変化球を投げるとかではなくて、この物語を一番活き活きと表現できる方法を考えた末に出来上がったのがこの『クジラアタマの王様』の小説の中にコミックパートが挟まれている意味なのでした。 現実と夢の世界があること。 「戦う」というアクションシーンがあること。 そして最後に読者に分かってくる巧みな仕掛けが活きてきて、小説を読むようにコミックパートを読んでいた自分がいました。 楽しい! 頭から引き込まれる展開と登場人物の魅力 全くタイプが異なり、ノリがいいというかユーモアのある登場人物が多数登場します。 岸、小沢ヒジリ、池野内にしてもまるで違う人生を送っていて性格も違うというのにどこか憎めないというか雰囲気が似ているように感じます。 そんな登場人物の身の回りに起きる出来事は読者である私の身の回りにもありそうな出来事ばかりで小説の頭から物語に引き込まれます。 異物混入事件もホテルの火災もサーカス団の猛獣が逃げ出してしまうということもどこかで聞いたことがあるけれども、対多数の人にとっては自分の身の周りにはあまり関係がない事柄ではないでしょうか。 ニュースは見たことがあったが……というくらいの。 でも小説の世界に入っていくといきなりそんな事件に巻き込まれるわけで、下手に聞いたことがあって状況を想像できるから、 心臓に悪いくらいにどきどきしてしまいます。 特に異物混入事件のお客様からのクレーム対応なんて想像しただけで胃が痛くなります。 そして保身とプライドばかりの上司なんて、本当頭に浮かんで怒りを覚えました(笑) これはどうなってしまうのだろうという臨場感が感じれる出来事が小さいものも大きいものも小説の開始から終わりまでずっと散りばめられていて読んでいて楽しいです。 どこかのテレビ番組の「モヤっと」「スッキリ」ではありませんが、 そんな どきどきと爽快感繰り返していくといつの間にか物語の大きな枠組みに気づかされて、なお終盤読むスピードが加速していくような読む意欲の爆発的向上でした。 「胡蝶の夢」のような世界 夢の世界の勝ち負けが現実世界の出来事の善し悪しに絡んでいくことはなんとなく池野内の話で分かってはいました。 ただ後半になって夢の世界が地図を受け取り、時には仲間と集まり、ハシビロコウの指し示すミッションに挑むような流れが頭に馴染んでくると、途中のコミックパートと小説の結びつきにも楽しみを感じていきます。 コミックパートの内容は小説でも活字で説明ありますが夢の世界がファンタジー的な世界でもあるので合わせて読むとまた新しい面白さがあります。 小説内には 「胡蝶の夢」(中国の思想家・荘子による、夢の中の自分が現実か現実の方が夢なのかといった説話)という表現もありました。 そのくらい夢の中の世界の自分達に引っ張られている現実の自分がいる部分があるくらいに自分らしく、根本の大事な気持ちが夢の中にあります。 ラスト、夢の自分をなぞって動く岸の姿は熱いです。 銀の鎧の男は返ってきた矢を再びつかむと、瞬時に足を前に出し、全力投球する投手よろしく、思い切り投げた。 意識するより先に僕は、その動きをなぞっていた。 紐を激しく引っ張り、矢を取り戻す。 ふわっと戻ってきた、ロケット型のグッズを必死につかむ。 前方に突き刺すつもりですぐに放っている。 もう一度! やり直すんだ。 一回負けてもチャンスはあるということ。 そもそも夢の中で岸が持っていた武器「スローイングアロー」(矢に紐がついたもの)は何度失敗しても立ち上がる岸の本質なのかもしれません。 クジラアタマの王様の感想・まとめ 冒頭から登場する謎の鳥「ハシビロコウ」の雰囲気が不思議で不安で、あとこれからどうなるのか期待する気持ちがありました。 (アイキャッチの背景はハシビロコウの画像です) どきどきしながら読み進めていつの間にか夢中で最後まで一気に読んでいました。 物語の途中で時間が途中で15年流れるのでなおさら伏線が回収された時にしみじみしてしまいました。 過去話してきた青年が大人になってこういう関わり方をするのか、と思う場面があったり、インフルエンザの話も序盤から修学旅行の校長の話など活きている部分がありました。 細かいところを上げるときりがないくらいに会話の節々の小さな部分から大きな部分までどんどん新しい面白みが増えていく内容は読み手を離しません。 魅力的な登場人物が織りなす物語ですから彼らの会話には名言と思えるくらい感じるところも多くて個人的には、 「短期的には非難されても、大局的には大勢の人を救うほうを選ぶべきじゃないの」 という言葉は胸に残っています。 目先のことではなくて自分の思い描くことに真っすぐ向かうような行動をとっていきたいです。 あっという間に読み終えてしまう止められない面白さ溢れた作品でした。

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伊坂幸太郎流“異世界転生”の物語 漫画との異色コラボ「クジラアタマの王様」|好書好日

クジラ アタマ の 王様

【内容情報】(出版社より) 待望の最新書き下ろし長篇小説 巧みな仕掛けとエンターテインメントの王道を 貫いたストーリーによって、 伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放った ノンストップ活劇エンターテインメント。 異物混入、政治家、アイドル、 人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥ーー。 伊坂幸太郎の神髄がここに。 【内容情報】(「BOOK」データベースより) 製菓会社に寄せられた一本のクレーム電話。 広報部員・岸はその事後対応をすればよい…はずだった。 訪ねてきた男の存在によって、岸の日常は思いもよらない事態へと一気に加速していく。 不可思議な感覚、人々の集まる広場、巨獣、投げる矢、動かない鳥。 打ち勝つべき現実とは、いったい何か。 巧みな仕掛けと、エンターテインメントの王道を貫いたストーリーによって、伊坂幸太郎の小説が新たな魅力を放つ。 【著者情報】(「BOOK」データベースより) 伊坂幸太郎(イサカコウタロウ) 1971年生まれ、千葉県出身。 東北大学法学部卒。 2000年、『オーデュボンの祈り』で新潮ミステリー倶楽部賞を受賞し、デビュー。 04年に『アヒルと鴨のコインロッカー』で吉川英治文学新人賞を、短編「死神の精度」で日本推理作家協会賞(短編部門)を受賞。 08年には『ゴールデンスランバー』で本屋大賞、山本周五郎賞を受賞、14年、『マリアビートル』で大学読書人大賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです).

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伊坂幸太郎『クジラアタマの王様』感想/未来を切り拓くのは誰だ!?

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ここからネタバレ注意! クジラアタマの王様の感想(ネタバレ) 伊坂幸太郎が叶えた長年の夢 というわけで、今回の『クジラアタマの王様』は長年の夢がようやく叶ったものです。 とあとがきで伊坂さんは書いています。 長年の夢とは 「小説の中に、作品の一部としてコミックパートが含まれる構造」を実現させることです。 『クジラアタマの王様』では間間に川口澄子さんのコミックパートが挿入されています。 始め私は挿絵を見るような気持ちで読んでいました。 でも読み進めるに従って、このコミックパートを「読む」ことで浮かんでくる世界の感触のようなものがあることに気づきました。 表現方法として小説の長所、映画やコミックの長所というものはあると思います。 奇をてらうとか変化球を投げるとかではなくて、この物語を一番活き活きと表現できる方法を考えた末に出来上がったのがこの『クジラアタマの王様』の小説の中にコミックパートが挟まれている意味なのでした。 現実と夢の世界があること。 「戦う」というアクションシーンがあること。 そして最後に読者に分かってくる巧みな仕掛けが活きてきて、小説を読むようにコミックパートを読んでいた自分がいました。 楽しい! 頭から引き込まれる展開と登場人物の魅力 全くタイプが異なり、ノリがいいというかユーモアのある登場人物が多数登場します。 岸、小沢ヒジリ、池野内にしてもまるで違う人生を送っていて性格も違うというのにどこか憎めないというか雰囲気が似ているように感じます。 そんな登場人物の身の回りに起きる出来事は読者である私の身の回りにもありそうな出来事ばかりで小説の頭から物語に引き込まれます。 異物混入事件もホテルの火災もサーカス団の猛獣が逃げ出してしまうということもどこかで聞いたことがあるけれども、対多数の人にとっては自分の身の周りにはあまり関係がない事柄ではないでしょうか。 ニュースは見たことがあったが……というくらいの。 でも小説の世界に入っていくといきなりそんな事件に巻き込まれるわけで、下手に聞いたことがあって状況を想像できるから、 心臓に悪いくらいにどきどきしてしまいます。 特に異物混入事件のお客様からのクレーム対応なんて想像しただけで胃が痛くなります。 そして保身とプライドばかりの上司なんて、本当頭に浮かんで怒りを覚えました(笑) これはどうなってしまうのだろうという臨場感が感じれる出来事が小さいものも大きいものも小説の開始から終わりまでずっと散りばめられていて読んでいて楽しいです。 どこかのテレビ番組の「モヤっと」「スッキリ」ではありませんが、 そんな どきどきと爽快感繰り返していくといつの間にか物語の大きな枠組みに気づかされて、なお終盤読むスピードが加速していくような読む意欲の爆発的向上でした。 「胡蝶の夢」のような世界 夢の世界の勝ち負けが現実世界の出来事の善し悪しに絡んでいくことはなんとなく池野内の話で分かってはいました。 ただ後半になって夢の世界が地図を受け取り、時には仲間と集まり、ハシビロコウの指し示すミッションに挑むような流れが頭に馴染んでくると、途中のコミックパートと小説の結びつきにも楽しみを感じていきます。 コミックパートの内容は小説でも活字で説明ありますが夢の世界がファンタジー的な世界でもあるので合わせて読むとまた新しい面白さがあります。 小説内には 「胡蝶の夢」(中国の思想家・荘子による、夢の中の自分が現実か現実の方が夢なのかといった説話)という表現もありました。 そのくらい夢の中の世界の自分達に引っ張られている現実の自分がいる部分があるくらいに自分らしく、根本の大事な気持ちが夢の中にあります。 ラスト、夢の自分をなぞって動く岸の姿は熱いです。 銀の鎧の男は返ってきた矢を再びつかむと、瞬時に足を前に出し、全力投球する投手よろしく、思い切り投げた。 意識するより先に僕は、その動きをなぞっていた。 紐を激しく引っ張り、矢を取り戻す。 ふわっと戻ってきた、ロケット型のグッズを必死につかむ。 前方に突き刺すつもりですぐに放っている。 もう一度! やり直すんだ。 一回負けてもチャンスはあるということ。 そもそも夢の中で岸が持っていた武器「スローイングアロー」(矢に紐がついたもの)は何度失敗しても立ち上がる岸の本質なのかもしれません。 クジラアタマの王様の感想・まとめ 冒頭から登場する謎の鳥「ハシビロコウ」の雰囲気が不思議で不安で、あとこれからどうなるのか期待する気持ちがありました。 (アイキャッチの背景はハシビロコウの画像です) どきどきしながら読み進めていつの間にか夢中で最後まで一気に読んでいました。 物語の途中で時間が途中で15年流れるのでなおさら伏線が回収された時にしみじみしてしまいました。 過去話してきた青年が大人になってこういう関わり方をするのか、と思う場面があったり、インフルエンザの話も序盤から修学旅行の校長の話など活きている部分がありました。 細かいところを上げるときりがないくらいに会話の節々の小さな部分から大きな部分までどんどん新しい面白みが増えていく内容は読み手を離しません。 魅力的な登場人物が織りなす物語ですから彼らの会話には名言と思えるくらい感じるところも多くて個人的には、 「短期的には非難されても、大局的には大勢の人を救うほうを選ぶべきじゃないの」 という言葉は胸に残っています。 目先のことではなくて自分の思い描くことに真っすぐ向かうような行動をとっていきたいです。 あっという間に読み終えてしまう止められない面白さ溢れた作品でした。

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